奨学金を利用するひとり親世帯の現状です。長引くコロナ禍で、生活苦に拍車がかかっています。
大学2年生太田舜也さん「皆さんの身近に助けてが言えない人が大勢いると思います」
2021年12月、仙台市中心部で「あしなが育英会」の奨学金を利用している大学生約20人が2年ぶりに募金活動を行いました。
2年ぶりの募金活動 その背景は
「あしなが育英会」は、病気や事故などで親を亡くした子どもたちや障害がある親のいる子どもたちを支援する団体で、月最大12万円の奨学金を支給しています。
奨学金は、寄付や募金で賄われていますが、新型コロナの影響で寄付が減り、年に2回行っていた募金活動は休止になりました。
今回、2年ぶりに再開した背景にはコロナ禍で奨学金を利用する家庭の生活が厳しくなっている現状があります。
あしなが育英会(東北)中村優一さん「コロナ以前から遺児家庭あるいは障害者家庭では、厳しい状態にあったのがまず前提としてあります。(コロナ禍で)貧困状態からの脱却が更に難しくなっている状況というのが、見えて取れるかなと思う」
「あしなが育英会」は2021年10月から11月にかけて、育英会の奨学金を利用している全国の高校生の保護者約4000人にアンケートを実施。アンケートの自由記述欄には窮状が綴られています。
「毎日もう終わりだと感じます」
「弱者は生きていてはダメなんでしょうか」
奨学金利用家庭が困窮
2021年9月の収入を聞いたところ、「収入がない」と回答したのは27.6%で、前回2018年の調査より7.4ポイント増えました。
保護者全体の平均月収は、手取りで10万6485円と2018年の調査より1万円以上減っています。
また、5人に1人が、新型コロナの影響で離職や転職を経験したと回答。そのうち半数が雇い止めで仕事を失っていました。
こうした状況から「あしなが育英会」の奨学金を利用する大学生や高校生などは、2021年度は過去最多の8325人と2018年度に比べ1.5倍に増加しました。
あしなが育英会(東北)中村優一さん「孤立感とか孤独感というのをインタビューやアンケートの中で感じました。今までは見せまいとしていたところが隠し切れなくなっている」
宮城県内に住む50代のAさんも雇い止めされた一人です。高校3年生の娘と2人で暮らしています。Aさんは15年ほど前、夫からの暴力が原因で足に障害が残りました。「あしなが育英会」からの奨学金に加え、コールセンターなどで派遣社員として働き、生計を立ててきました。しかし2021年2月、新型コロナの影響で、派遣先から雇い止めされ、無職に。生活保護費や奨学金はあったものの、生活は厳しかったと話します。
Aさん「光熱費とかを寒くても我慢して上着着ているとか、本当にギリギリで生活していたので、仕事なかったらどうしようと思って、焦る気持ちと落ち込んじゃってつらい気持ちでいっぱいでした」
2021年12月にようやく仕事が見つかりましたが、大学に進学する娘の入学金や授業料などで100万円以上を支払ったため、銀行の残高は138円に。先行きに不安を感じています。
Aさん「働けなくなったらどうしようとか、家賃も払えない、授業料も払えないとなったら困るので、まだまだ不安ですね」
長引くコロナ禍は、親元を離れて暮らす大学生にも暗い影を落としています。仙台市の大学3年生、有住龍星さん(21)です。5歳の時に母親が病気で死亡。父親も病気にかかったり、リストラに遭ったりしたため「あしなが育英会」からの奨学金を利用しています。生活費は「あしなが育英会」と他の奨学金も合わせて月13万円。家賃や光熱費、食費にほとんど消えていきます。
生活費を稼ぐため、週に4日ほどは飲食店でアルバイトをしていましたが、新型コロナの影響で、2021年から何度も休業に。第6波を受け、3月まで休業することが決まりました。
有住龍星さん「きのうもまたコロナの影響で店を休みにするということで、元々、自分も今週、来週とシフトが入っていたんですが、それが全部なくなった。最初のコロナの時は補償は付けてもらえると言ってもらえてたんですが、ここまで(休業が)増えてくると、今回はまだ補償という話はもらっていないので、どういうふうになっているのかすごく不安」
2021年度の奨学金は過去最多の63億円に上る見込みですが、寄付額は2021年11月時点で、28億しか集まっていません。
「あしなが育英会」への問い合わせや寄付は電話で受け付けています。