台風などの影響により各地で水害が相次いでいます。仙台市中心部の地下ではこうした事態に対応しようと、ある工事が進んでいます。
全国各地を襲う豪雨で都市部では大規模な冠水が起き、都市機能がまひする事態が起きています。仙台市でも2019年の台風19号の際、中心部が広い範囲で水没しました。
鈴木奏斗アナウンサー「仙台駅前、大雨で道路が冠水してしまっています。歩道と道路の境目が分からない位水がたまっています」
仙台駅周辺では、こうした冠水が起きることは珍しくありません。
飲食店主「ちょっと多めの雨が降ると、段々と水がたまってきますね。5年前の時は、店の入口の中まで濡れていましたね」
仙台駅の周辺が冠水するのには理由があります。実は、駅に向かって土地が低くなっていて、雨水が流れ込みやすいのです。仙台市中心部は、こうした周囲より低い場所が何カ所かあり、大雨の度に冠水などの被害が出ています。
こうした事態を改善しようと、仙台市は90億円近くをかけてある工事を進めています。
仙台市管路建設課柴田誠主幹「こちらがシールド工事の現場になりますので、ご案内いたします」
仙台市青葉区の五橋公園の建物の中には、巨大な空間がありました。
仙台市管路建設課柴田誠主幹「こちらが発進立坑になりまして、直径約10.5メートル、深さが約15メートルある立坑になります。それでは下に降りたいと思います」
地下には、奥へと続くトンネルがありました。
平塚学記者「建設中の雨水菅の内部です。直径2.6メートルで、手を伸ばしても届かないほどの太いトンネルになっています」
地下深くで行われているこの工事は、言わば雨水の逃げ道を作っています。
仙台市では現在、雨が降った際に雨水が直径25センチから1メートルほどの下水管に流れ込みます。ところが、細い下水管では1時間当たり30ミリを超える激しい雨が降ると、マンホールを逆流して地上に水があふれ冠水してしまいます。
仙台市では下水管の通り道にわざと水をあふれさせる分水人孔と呼ばれる縦穴をつくり、あふれた雨水を直径1.5メートル程の雨水管に誘導し、雨水を更に直径約2.6メートルの雨水管に集めて広瀬川に流そうと計画しています。
そのための大きな雨水管を整備しているのが、このトンネル工事です。
先へと進んでいくと、先端部分ではシールドマシンと呼ばれる掘削機がトンネルを掘り進めていました。
仙台市管路建設課柴田誠主幹「シールドマシンの先端部分になります。マシンの先端に地穴を掘るビットがあり、掘進をしながら徐々に前に進めている状態です」
仙台市では直径1.5メートル程の雨水管を3本、約3キロにわたって整備します。3本の雨水管に集まった雨水を集めて広瀬川に流す直径2.6メートル程の雨水管を約800メートル整備します。
仙台市管路建設課柴田誠主幹「仙台駅西口地区の浸水対策事業、全ての工事が完了すると(10年に1度という)1時間当たり52ミリの降雨に対しても、浸水被害が発生しないという整備を行っています」
1日に掘り進めるのは直線部分で6メートルから7メートルで、最も太い雨水菅は広瀬川の手前まで掘削が終わり、2026年3月には全体の工事が完了する予定です。
近年は、1時間当たり100ミリという集中豪雨も珍しくありません。仙台管区気象台の加茂祐一主任予報官は、温暖化に伴い今後水害のリスクは更に高まると警告します。
仙台管区気象台加茂祐一主任予報官「大雨という現象そのものが減ることはないかと思います。どこでも大雨になる可能性があるし、過去よりも大雨が増えてきている」
仙台市管路建設課の柴田さんは、ハード整備には限界があり市民1人1人の対策も求められると話します。
仙台市管路建設課柴田誠主幹「整備水準は1時間当たり52ミリですので、80ミリとか100ミリとかが降ってしまうとかなり災害のリスクは高まってしまいます。事前に自分の住んでいる場所などがどの程度浸水しやすいかといった浸水リスクを把握しておくことが重要です」