東日本大震災発生から9日後に宮城県石巻市内で救出され「奇跡」と報じられた男性と、救出にあたった宮城県警のトップ、そして救出を報じた記者がそれぞれの思いを語りました。

 阿部任さん「褒められるような人間じゃないんだというようなギャップを感じていていたのが3月20日」

 この討論会は、震災の教訓を伝え続けようと石巻市で開かれました。

 当時高校生だった阿部任さんは、津波により祖母とともに自宅ごと流され9日後に救出されました。

 当時、「奇跡」と報じられたことに思い悩んだと話しました。

 阿部任さん「避難しなくても大丈夫なんじゃないかという油断みたいなものが完全にあった。自分の失敗を棚に置いて褒められている感じがしてそれがすごく苦しかった」

 一方、当時の県警本部長で救出活動を指揮した竹内直人さんは、阿部さんの救出に勇気づけられたと述べました。

 竹内直人さん「我々にとってみれば本当に真っ暗闇の中に光が射して、これでもうひと頑張り災害対応活動みんなで頑張ろうと誓いを新たにした、そういう出来事だった」

 また、救出を報じた河北新報の佐藤崇記者は、阿部さんが「奇跡」という表現に傷ついたことを知り、「心がざわついた」「強すぎる表現だったのか正しかったのか今も行きつ戻りつある」と胸のうちを語りました。

 参加者「『奇跡』という言葉が、受け取る側としては違和感もなく受け取っていたものが、実は当事者にとってはちょっと苦しいものになっていたということが、なるほどなと目からうろこ」

 訪れた人たちは、それぞれの立場から見た「救出劇」への思いに耳を傾けていました。