日本の臓器提供数は、海外と比べて依然として少ないものの2023年に過去最多になりました。
11月2日に大阪府で行われたイベントには、過去に臓器移植を受けた子どもたちが全国から集まりました。病室とオンラインでつなぎ、移植を待っている子どもたちにエールを送る場面もありました。
京都府に住む中園瑛心さんは、その様子を特別な思いで見つめていました。
中園瑛心さん「たくさん思い出す。皆には移植待機はつらいと思うんですけど、頑張ってほしいですね」
瑛心さんは9歳の時に心臓のポンプ機能が低下する拡張型心筋症と診断され、心臓移植が必要と告げられました。2019年に補助人工心臓を装着し、大阪府の病院で移植を待つ日々が始まりました。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で医療現場がひっ迫したことなどから、2020年以降国内の移植件数が減少し待機期間は3年半を超えました。
中園瑛心さん「移植して家に帰って学校に行ったりしてみんなと勉強したい。やっぱり家族で一緒にご飯食べたりとかしたいです」
2023年にドナーが現れ、瑛心さんは移植にたどり着くことができました。
中園瑛心さん「もう元気でうれしい。その一言かな。何かここの鼓動がドキドキが感じやすくなって。ドナーには、元気な心臓をくれてありがとうって。自分はちゃんと生きてるよって」
手術を終え約4年ぶりに家族が待つ家に帰ることができた瑛心さんは、長期の入院生活で低下した体力や筋力を取り戻すのに苦労しましたが、今ではしっかりとした足取りになりました。
地元の中学校に戻り体育祭や学園祭にも参加するなど、充実した学校生活を送っています。
母親中園みどりさん「やっぱりこの1年がすごい成長じゃないけれども。いただけた時間がありがたいなってめっちゃ思いますよね」
1997年に脳死による臓器提供が可能になって以降、国内の臓器提供数はコロナ禍で一時落ち込んだものの増加傾向にあり2023年は過去最多の131人がドナーになりました。
その一方で、ドナーから提供された臓器の受け入れを複数の医療機関が辞退し、移植手術が見送られた患者が一定数いたことが厚生労働省の調査で明らかになっています。
人員不足など医療機関の受け入れ態勢を理由に断念したケースもあり、厚労省は移植を希望する患者が事前に登録する施設を現状の1カ所から複数にする仕組みを整えたいとしています。
イベントでは、かつて臓器を提供してくれたドナーに感謝の想いを伝える場面もありました。
横山由宇人さん「何でもない日々を楽しく過ごせるのは、ドナーさんが私の所に来てくれたからです。本当に感謝しています。これからも私の体には2人分の命が入っていることを忘れずに、大切に堂々と生きていきたいと思います」
宮城県に住む横山由宇人さんは重い心臓病で10年以上前に海外で心臓移植を受け、2023年に大学生になりました。
由宇人さんが待機を始めた2010年には、家族の承諾があれば15歳未満でも提供が可能になりましたが、当時子どもの心臓移植は年に1件あるかないかでした。
周囲に理解されず苦しんだ時期もあった由宇人さんは、移植医療がもっと身近で当たり前の医療になることを願っています。
横山由宇人さん「普通に日常生活できてるし、アルバイトもできてるし、学校も行けてるし、皆が楽しいっていうこともできてるから、それだけで感謝なんですよドナーさんには。
移植って単語を日常生活で使うくらい流行語になるくらい有名になってくれたらうれしいと思います」
命をつなぎ希望をつなぐ臓器移植、瑛心さんの中にも、新たな思いが芽生えています。
中園瑛心さん「学校中に聞いてみたけど、みんなまだ移植医療っていうのを知っていない人が大半なので、この移植医療を知ってほしいです」