仙台空港と海外を結ぶ直行便の再開などでインバウンド客が増加し、旅館・ホテル業界では人手不足が課題となっています。ITを取り入れたり忙しい時間帯だけアルバイトを雇ったりと、人手不足解消に取り組んでいます。

 東北運輸局川﨑博局長「外国人の延べ宿泊者数は順調に伸びているという状況でして、8月としても過去最多の宿泊者数ですし、8カ月連続で最多の更新ということでございます」 
 国内旅行者が人口減少や物価高などで伸び悩む中、仙台空港と台湾などを結ぶ定期便を利用した外国人観光客は好調です。

 宮城県に宿泊した外国人の数は1月から8月までで49万人を超え、1カ月ごとの宿泊者数も最多を更新し続けています。一方で深刻なのが働き手不足です。
 4月から9月までの宮城県の宿泊事業者の新規求人数は1124人でしたが、就職者は152人にとどまっています。
 宮城労働局職業安定課伊藤文武課長「交代制などで労働時間が一定ではないということもありますので、求職者ニーズとのミスマッチが存在しておりまして充足しにくい傾向があるのかなとみております」

 宮城県松島町の老舗温泉旅館、小松館好風亭は人手不足を乗り切るために2022年からITを活用し始めました。事務所に設置されているのは、顧客情報などを一元的に管理できる大型モニターです。以前はホワイトボードを使っていました。
 小松館好風亭小松篤司社長「以前はホワイトボードに当日のお客様の情報を記入していまして、お客様が多い時ですと1時間ぐらいかかることがありました」

IT活用で人手不足解消へ

 事務作業にかかっていた時間を、接客に回せるようになりました。接客担当者が身に着けているのは、インカムとスマートフォンです。
 最新の顧客情報をいつでもどこでも確認できて、到着時刻や食事内容に急な変更があればスタッフの間ですぐに共有して対応できるようになりました。
 今後は翻訳機能が付いたパネルをフロントに設置し、外国人宿泊客への対応も効率化を図りたいとしています。
 小松館好風亭小松篤司社長「こんな旅館だったら働いてみたいなと思ってもらえるような旅館にできれば人手不足は解消していくのではないかなと思いますので、こういった事業に取り組んで良い旅館を目指すところから始めていきたいと思います」

 自治体として人手不足解消に乗り出したのは、仙台市です。5月に仙台観光国際協会と求人アプリサービスを運営するタイミーと連携協定を結びました。タイミーが提供しているのは、短時間単発で働くスポットワークと呼ばれる働き方です。忙しい時だけ人手を確保したいという事業者の助けになっています。

 仙台市太白区秋保の緑水亭はコロナ禍でも人員削減は行いませんでしたが、宿泊者が戻るにつれて忙しさに耐えられず退職してしまう従業員も出てしまいました。
 若女将高橋知子さん「観光業界がすごく静かになってしまった時、営業していても暇なわけですよね現場が。そういう経験を一度するとまたエンジンをかけてコロナ前に戻す、自分の体とか感覚を戻して仕事をするというのがすごく時間がかかっている」

 こちらでは、客室清掃を行う朝と夕食を提供する夜の忙しい時間帯にスポットワークを導入しています。
 若女将高橋知子さん「ずっと固定のメンバーではないという情報が先に入ってきてましたので、果たしてそれで仕事が回るのかどうかっていう不安がありましたが、うちの職場を気に入っていただいて、長く回数を重ねて仕事をしたいという考え方になってくださった方が何度も登録をしてくださっているので、そこはすごくありがたいなと思っております」

スポットワーク活用で人手不足解消へ

 スポットワークの便利さを感じつつも、コロナをきっかけにサービスや働き方の多様化も求められ今後の在り方については頭を悩ませていると話します。
 若女将高橋知子さん「外注費にかかる経費がかかっているわけなので、そこはかけなくてはいけない経費という考え方で、ただバランスもうまくとっていかなくてはならない。模索中ではあります」

 仙台市は、仙台観光国際協会を通じてタイミーを導入する事業者にシステムの導入費などとして最大10万円を補助します。更にタイミーを介した働き手に対しては、旅館・ホテル業界で必要なマナーやベッドメイキングといった技能を身に着ける研修を実施しています。

 短時間単発のスポットワークでありながらも、働き手の質と継続性を担保して人手不足解消につなげたい考えです。
 仙台市文化観光局柳津英敬局長「1時間から働けるっていうことですね。これまでそういったアプローチはなかなかできなかったのですが、かなり可能性が高まると思っていますので期待したいと思っています」