高級魚として知られるノドグロの水揚げ量が宮城県で急増していて、チャンスと捉えた水産加工会社が動き出しています。

 ノドグロは白身のトロとも呼ばれ、刺身にしても煮つけにしても絶品の高級魚です。本来は島根県や石川県など日本海側が主な産地ですが、その水揚げが宮城県の海で急増しています。
 2023年の石巻魚市場で競りにかけられている魚は、かなり立派なサイズのノドグロです。価格は1キロ1万円と、同じ赤魚の高級魚で石巻市でよく水揚げされるキチジの3倍以上です。
 石巻魚市場佐々木茂樹社長「石巻で揚がる魚の中では、一番高い魚になっています。通称はノドグロと呼ぶ地域もありますが、学名はアカムツなんですね。アカムツが取れるというのは予想もしておりませんでした」

ノドグロの水揚げが増加

 ノドグロは大きい物で体長40センチほどです。宮城県での水揚げ量は2000年以降、年間1トン以下で推移していましたが2015年ごろから増加し、2024年は約33トンとこの10年で30倍以上になりました。

 山徳平塚水産平塚隆一郎社長「これが最近増えているノドグロですね」
 石巻市の水産加工会社、山徳平塚水産の平塚社長はノドグロの増加を大きなチャンスと捉え、商品づくりに乗り出すことを決めました。目を付けたのが、10センチ前後と小さなサイズのノドグロです。
 山徳平塚水産平塚隆一郎社長「小さい物は、今のところかなり安い値段で使われているので、すり身とかにもなって、笹かまぼことかにも入れられたりするようですが、もう少し付加価値を付けようじゃないかっていうことで、今、色々試作をしているところなんですね」

 商品開発を始めたのには理由があります。こちらの会社では加工した煮魚などを出荷していますが、海水温の上昇や海流の変化などにより、主力のサバやサンマの水揚げが激減し入荷量がこの5年で1割ほどにまで落ち込みました。
 山徳平塚水産平塚隆一郎社長「原料が入手できないというのは非常に困ったことですね。
なにせ売り物が無いっていう感じですから。増えている魚種に少しでも転換して、主力魚種の不調、不漁を穴埋めする形で考えてはいますけど」

ノドグロ茶漬け

 試作したのは、ノドグロのお茶漬けです。上品な脂と、ほろっとした食感を活かしました。
 山徳平塚水産平塚隆一郎社長「食感としては良いですね。上品な味というか高級な味はします。人気は出るんじゃないでしょうか。あと、原料の魚が順調に取れるかどうかですけど」

 ノドグロ急増の理由について、水産資源に詳しい東北大学大学院の片山知史教授は。
 東北大学大学院片山知史教授「(ノドグロが増えた)2015年あたりは、海水温が高くなったり、それに伴って暖水系の魚サワラやタチウオ、ケンサキイカとかが多くなりました。恐らく、日本海側から資源の増大に伴って分布域がこちらの方まで広がったと考えています」

 片山教授は、海水温の上昇によって日本海側にいたノドグロが津軽海峡を越えて、宮城県沖までやって来たと推測しています。
 東北大学大学院片山知史教授「アカムツの魚体の状態を見てみると、成熟した個体も散見されます。それが仙台湾の沖で産卵している可能性もあるとみています。漁獲としては、しばらくは高い状態が続くと私たちは予想しています」

海の変化に対応を

 ノドグロがいつまで安定して入荷できるか見通せませんが、平塚社長は海の環境の変化に対応できるよう準備をすることが大切だと考えています。
 山徳平塚水産平塚隆一郎社長「変化に対応していかないと生き残っていけませんので、どんどん変化に対応して新しい物を作っていくということが大事なんだろうと思います。対応するコツは変化を怖がらないっていうことなんじゃないですか」