3月31日、宮城県が進めている仙台医療圏の4つの病院の再編構想について、2つの病院が移転する可能性のある仙台市が経緯や根拠となるデータが示されていないとする意見をまとめ、県に提出しました。
再編構想では、太白区の仙台赤十字病院と名取市の県立がんセンターを統合して名取市に移転。青葉区の東北労災病院と名取市の県立精神医療センターをそれぞれの経営主体を維持したまま、富谷市に集約する考えです。
県は、バランスの取れた医療提供体制の実現や救急搬送時間の短縮につながるとして、今年度中の基本合意を目指しています。これに対し、仙台市や地元住民らの反対の声が広がっています。
太白区にある仙台赤十字病院。近隣の町内会で作る八木山連合町内会の広瀬博会長(81)です。
八木山連合町内会広瀬博会長「実態を本当に分かっているのかという感じがいたしまして、ですから、日赤さんがここからいなくなるなんて、私ども、考えられない」
仙台赤十字病院の移転反対署名を提出
八木山地区の住民らは「移転すれば大きな影響が出る」として、2021年12月、移転に反対する1万2874人分の署名を県に提出しました。約40年前に住民らが建設を誘致した仙台赤十字病院。住民は親しみを込めて「日赤さん」と呼ぶ地域医療の要です。
八木山連合町内会広瀬博会長「それぞれの地域の問題、関わりがあるわけですから、それを十分に聞いて色々な有識者を交えて、それをどうくみ取っていくかということを議論すべきだろうと。それが一つも出てないわけですね」
村井宮城知事が4病院の再編構想を明らかにしたのは、2021年9月。
村井知事「仙台赤十字病院と県立がんセンターを統合し、新たな拠点病院の整備について協議を開始。診療内容を含む病院規模について、2022年度中の基本合意を目指す」
なぜ、仙台医療圏の病院再編が必要なのか?県は、仙台市への病院の集中による経営環境の悪化や施設の老朽化などを挙げ、バランスの取れた医療提供体制の実現や救急搬送時間の短縮につながると考えています。
県によると、2019年の各消防の救急搬送にかかる時間は、県の平均が41.7分、仙台市は39.3分、名取市は県内最長の51.3分と仙台市とその他の地域で大きな差があるとしています。
また、今後高齢者の増加に伴い、リハビリなどを行う回復期病床が3000床余り不足する一方、手術などをする急性期病床が2000床ほど過剰になると指摘。
急性期病床が仙台市内に集中していると競合が生じ、病院の経営環境の悪化を招きかねないとして、病院の適正な配置と病床数の調整が必要としています。
「病院の適正な配置と病床数の調整を」
村井知事は、こうした課題を解決するため、再編構想を打ち出したのです。
村井知事「県としてはですね、仙台医療圏全体を考える、宮城県全体の医療を考えたら、このような考え方で仙台赤十字病院、東北労災病院と協議に当たる方が県民の利益につながる」
「納得できる説明を」
2つの病院が市外に移転する可能性がある仙台市は、この構想に猛反発。
2021年11月、医療関係者らによる懇話会を設置して、再編の影響などを4回にわたって議論してきました。
救急搬送時間を短縮できるとする県の主張について、仙台市は「各消防本部の活動時間の内訳などが明確でなく、実態を十分に反映しているか疑問がある」と反論。
郡仙台市長「皆さんが納得できるような形で、説明をやはりしてもらいたい。4つの病院の方向性の根拠となるデータも明らかにしてもらわないと、それぞれ市民の皆さまの不安も払拭することができない」さらに、住民や医療関係者の理解と協力が不可欠だとして、住民や医療関係者らが参加するオープンな場での議論を求めています。