再生可能エネルギーについてです。宮城県加美町の周辺では、最大150基に及ぶ風力発電用風車の建設が計画されています。その是非は町民を二分していて、1日に告示された町長選の争点の1つになっています。
加美富士とも呼ばれる加美町の薬莱山。その西側で発電用風車10基の建設が進んでいます。風が安定して吹く加美町や近隣の山々では、エネルギー大手の出資する企業など3社が、この10基を含め最大150基に上る風車の建設を計画しています。
3社の計画をめぐって加美町は、町民座談会と称した集会を5月から6月にかけて合計9回、町内各地で開きました。
賛成住民「いよいよ(風車が)建ったな、という高揚感」「この地区の山々がエネルギーをつくる、電気をつくる、資源を生み出す地域に変わりつつある」
3社の1つで風車を建設中のJRE宮城加美は、地元への貢献策として企業版ふるさと納税を実施しています。今後はランドセルの購入補助も検討しているなどと説明し、町民に理解を求めました。
集会には、風力発電に疑問を投げかけたり反対したりする意見も出ました。
反対住民「20年そこそこの(風力発電の)ために山を壊して大きな構造物をつくり、20年後また解体する。本当に無駄だと思って。皆さん、そこを問題視していると思う」
反対する住民は、開発に伴う森林の伐採が土砂災害を招いたり水源に悪影響を及ぼしたりする恐れを指摘。町有地をめぐり町がJRE宮城加美と結んだ契約は、事故が起きた際に十分な費用を請求できず、住民の生活を守ることが困難になるなどとして、町長に対し事業者に土地を利用させないことを求める訴えを起こしています。
更に、町にとって不利益な契約を議会の議決を経ずに結んだとして、地方自治法に違反するとも主張しています。
風力発電を町の発展につなげたいのが、現職の町長、猪股洋文氏(71)。7月19日、JRE宮城加美の建設現場を視察しました。
猪股洋文氏「しっかりと整備していますから土砂災害等のリスクはほとんどないだろうと、安心していいだろうと改めて確認できました」
町が交わした契約への批判については「議員に丁寧に説明していて、違法性も無い」などと反論。未着工の2社の計画についても、個々に精査する考えを示した上でこう述べます。
猪股洋文氏「地球の温暖化は人ごとではありません。排除ではなく風力発電と共存する道を選ぶのが賢い方向だろうと思う。そのことによって町に税収が入り、地域経済が潤う」
一方、新人で元衆院議員の石山敬貴氏は、風力発電による地元経済への効果は限定的だと考えています。
石山敬貴氏「自然再生エネルギーを否定するつもりはありません。しかしながら、あまりにも手続き論(などで問題がある)。これだけ大規模な、風力発電の密度日本一になろうかという(規模の計画だ)」
町がJRE宮城加美と結んだ契約については見直すべき点がないか精査するとし、未着工の2社の計画には反対です。
石山敬貴氏「(未着工の2社の計画に)基本、私は反対です。(風車建設のため)町有地であったりとか保安林の解除というようなことは無し、と考えています」
町長選は政治手法や子育て支援、農業振興策なども争点になる見通しですが、選挙の結果は風力発電の計画の行方に影響を与えそうです。
これには宮城県独自の再エネ課税も関わってきます。県は森林を開発して風力や太陽光など再生可能エネルギーの発電設備を新設する事業者に対し、独自に課税することを目指しています。
この再エネ課税の条例案は既に6月の県議会で可決されていて、総務大臣の同意を得て2024年春までに導入したい考えです。森林の開発に一定の歯止めをかけるものですが、一方で森林であっても再エネにふさわしい場所として市町村が再エネ促進区域に設定すれば、非課税となります。
村井宮城県知事「(県内で計画されている)36事業、やるならば全て促進区域内でやっていただきたいと思っております」
JRE宮城加美は着工済みのため課税の対象外ですが、現職の猪股氏は未着工の2社の予定地も非課税となるよう再エネ促進区域の設定に前向きです。
猪股洋文氏「促進区域を指定するということは、当然必要になってくるだろうと思っております」
一方、新人の石山氏は促進区域を設定するつもりはない、と言います。
石山敬貴氏「(設定を提案されても)断ります。(未着工の2社に)建設させたくないから、です」
風力計画の是非が争点の1つとなる加美町長選挙は、1日に告示されました。
猪股洋文氏「町の将来の姿、町の未来は皆さん方の手の中にいます。風力(発電設備)も排除ではなく共存の道を選びましょう」
石山敬貴氏「(風車が150基建てば)水害の被害のリスクが、私は高まると感じています。これ以上の風力発電所の建設、これを皆さんとともに断固反対」
注目の選挙は8月6日に投開票されます。