重い心臓病を患い心臓移植を待っていた1歳の女の子が、8月にアメリカで移植手術を受けました。我が子の命をめぐる家族の日々です。

 10月31日に2歳の誕生日を迎える佐藤葵ちゃん。8月にアメリカで心臓移植を受けました。
 父親佐藤昭一郎さん「退院できて今は週2回通院してるんですけど、どの経過も良好で、ご飯もモリモリ食べてだいぶ元気ですね。だいぶ活発になってきています」

 母親佐藤清香さん「あおちゃん。お母さんだよ。大丈夫だよ」
 東京都で生まれた葵ちゃん。心臓のポンプ機能が低下し全身に血液を送ることができなくなる重症心不全を抱え、補助人工心臓で命をつないでいました。

 1日も早い心臓移植が望まれる中、家族は海外での移植を決断しました。
 父親佐藤昭一郎さん「現状の日本ではあまりにもドナーさんが現れる頻度が少ない、可能性が少ないと」

海外で心臓移植

 日本の100万人当たりの臓器提供数はアメリカの51分の1、韓国と比べても9分の1と諸外国と比べて格段に少ないことが現状です。
 国内で心臓移植を待っている10歳未満の子どもは8月末時点で49人に対し、10歳未満の心臓移植は2010年以降の13年間で32件と深刻なドナー不足が続いています。
 葵ちゃんの担当医埼玉医科大学国際医療センター戸田紘一医師「脳死の状態であると評価してくれる医者だったり、そういったことをしっかりお話できる人が少ないんだと思います。脳死の話をして臓器提供の話を切り出すということはとてもパワーがいることですし、経験も必要なところだと思うので多分そういったところがまだまだ足りていないということもあると思います」

 アメリカでの移植を目指し動き出した家族に、大きな壁が立ちはだかります。保険が適用されない上、急激な円安の影響で手術に必要な費用は5億3000万円に膨れ上がりました。
 母親佐藤清香さん「こういった形で世の中の皆さんにお願いすることに対して考えるところ迷うところはありましたが、ギリギリのところで生きている葵を皆さんの力で助けていただきたいというそれだけでございます」

 両親は支援者と共に2022年11月に募金活動を開始。母親の清香さんのふるさとで、2人が大学生活を送った仙台市でも支援を呼び掛けました。
 母親清香さん「母親です。ありがとうございます」
 募金した人「頑張ってください、少ないですけど」
 母親清香さん「助けていただいてありがとうございます」

 父親佐藤昭一郎さん「おはよう、葵。だいぶぷっくりしてきたんじゃない、更にあなた。体重どれくらいになった?」
 母親佐藤清香さん「6.7キロぐらい」
 両親は交代で、葵ちゃんの入院する埼玉県の病院に泊まり込んで付き添う日々。自宅では長女が葵ちゃんの帰りを待っていて、家族離れ離れの生活が半年近く続いていました。
 父親佐藤昭一郎さん「(長女に)申し訳ないことしてるなっていう、この状態が。
なので、早く皆で一緒に生活できる日が来るようにと思っています」

 募金開始から約1カ月。家族の思いが届き、目標金額を達成しました。3月にアメリカへと出発する日を迎えました。
 母親佐藤清香さん「無事に元気な姿で4人で帰って来られるようにできればと思います。ありがとうございました」
 父親佐藤昭一郎さん「ありがとうございました本当に」

 医療用のチャーター機に乗り、ニューヨークに向かいます。
 母親佐藤清香さん「アメリカの病院だと、親2人と葵でいられるので。今は、例えば2時間とか一緒に親子3人というと初めてぐらい。それはうれしい。体調が良くなってきたので、元気があり余ってしまって寝なかったんですよ」

移植手術は無事成功

 渡米から4カ月が経った8月。
 父親佐藤昭一郎さん「頑張ってな葵!頑張れ」
 ドナーが現れ、葵ちゃんは移植にたどり着きました。6時間に及ぶ手術は、無事に成功しました。
 母親佐藤清香さん「本当に色々な方のおかげでここに来て手術を受けられたので、ドナーの方もそうですけど、みんな味方でいてくれてみんなが力になってくれたよということをもう少し大きくなったら伝えたいです」

 手術から2カ月。当たり前ではない家族での生活。
 父親佐藤昭一郎さん「娘はまさに生かされている状態、生かしていただいているところがあると思うので、そこは両親は忘れないようにしつつ自然と大切に生きていくっていうふうに思ってもらえるように、我々が頑張ってサポートするというかそういう気持ちでいますね」

 佐藤葵ちゃんの経過は良好で、早ければ年末年始に帰国できる予定だということです。

経過は良好