様々な細胞に分化し臓器の修復ができるとされているMuse細胞を発見した東北大学の研究チームが、シンガポールの会社に開発の権利を譲渡したことが分かりました。

 Muse細胞は体の中に存在する万能細胞で、血中に投与すると体内の損傷部分から出されるSOSシグナルに反応して損傷部分に向かい、たどり着くと損傷部分の細胞に分化し修復することができます。

 東北大学の出澤真理教授の研究チームが発見し、2018年から始まった脊髄損傷やALSなどの治験で、現代の医療では治療は難しいとされる症例にも点滴投与で治療効果があることが国際的な学術誌に掲載されました。

 国内での実用化を目指して東京都の企業と開発を進めていましたが、企業側の治験の報告書の内容と研究チーム側の記録に大きな違いがあったため開発は中止になり、国内での実用化が白紙になっていました。

 こうした中、シンガポールに本社を置くイギリス資本の会社が名乗りを上げたため、1月にMuse細胞を開発する権利を譲渡し、欧米や中東などで治療が行われています。

 東北大学医学部細胞組織学分野出澤真理教授「2024年7月くらいだったと思いますけど、ヨーロッパとカナダの医者が来られて実はMuse細胞の治療を10年くらい前から作ってやっていると。聞くと劇的な効果があって是非事業化しないかという話だったのでびっくりしてですね。しかも色々な疾患の患者さんにも投与されたり、数千人の規模じゃなかったんですよ」

 出澤教授は、治療できる国の裾野が広がることでより多くの人の命を救うことにつながると期待しています。

 東北大学医学部細胞組織学分野出澤真理教授「このまま詰んだ状態で日本にいてもしょうがないということで、これは残念ではあるけれどもこういう決断をせざるを得なかった。今は欧米や中東を中心に進んでいますけど、拠点を作っていけば少しは日本の患者さんにもアクセスができるんじゃないかと期待しています」