2021年8月に発足した小さく生まれた赤ちゃんとその母親のためのサークルです。サークルの目標は2つ。悩みを共有し、母親たちを孤立させないこと。そして、小さく生まれた赤ちゃんのための母子手帳の導入です。

 仙台市内に集まった6組の親子。早産などで小さく生まれた赤ちゃんとその母親たちです。サークルの名前は英語で無限を意味する「インフィニティ」。
 サークルのメンバー「うちは23週5日で607グラムでした。こういう境遇に置かれている子どもとか家庭ってまれだと思うので、心強い存在ですね」

 このサークルを立ち上げたのが仙台市の主婦村上理美さんです。2020年9月、予定日より3カ月半早く次女の詩幸ちゃんを出産しました。体重は571グラム、身長29センチでした。
 インフィニティ代表村上理美さん「病院にいるうちから、同じ境遇の人とつながって、『こういう時、どうしたら良いんだろう』って話はしたいと思ってはいたんですけど。病院のNICUってそういう雰囲気じゃなくて、そういうサークルがあったら入りたいなとずっと思っていたんですけど、無くて無いなら作っちゃえと」

同じ境遇の人たちとつながることができる所を

しゃべる場所・つながる場所を

 2021年8月に6人でスタートしたサークルも、現在、メンバーは16人にまで増えました。
しかし、新型コロナの影響でなかなか集まることができず、普段はSNSなどで交流していて、この日が2回目の会合です。
 インフィニティ代表村上理美さん「『同じ境遇の人としゃべれる所、つながれる所を求めてました』っていう人が結構多くて。とてもありがたいなって思います」

 厚生労働省によりますと、生まれてくる子どもの約8%が体重2500グラム未満の「低出生体重児」です。1000グラム未満で生まれる「超低出生体重児」も0.3%います。周産期医療の発達により、40年前に比べ「低出生体重児」は倍近くに、「超低出生体重児」は3倍に増えています。

低出生体重児の割合(厚生労働省人口動態統計)

 こうした中、サークルのメンバーが取り組んでいるのが、小さく生まれた赤ちゃんとその母親のための母子手帳「リトルベビーハンドブック」の製作です。
 一般的な母子手帳は、体重は1000グラム、身長は40センチからしか記入できません。さらに、「ハイ」か「イイエ」で答える発達の目安が、母親の精神的負担になるケースもあると言います。
 サークルのメンバー「ほんとはそこに記録書きたいんですけど、なかなか書けないというのはもどかしかったですね」「母子手帳に沿った成長をしていなかったりすると、どんどん縁遠くなっていくというか、なかなか開く機会がないですね」

リトルベビーハンドブック

 「リトルベビーハンドブック」は、2018年に静岡県が最初に製作しました。体重0グラム、身長20センチから記入できるほか、先輩家族の体験談やサークル情報の掲載など、さまざまな工夫がされていて、今では福岡県や広島県など全国11の自治体で導入されています。
 サークルのメンバー「前向きになれる。できないことを書きためていくのではなくて、できることを書きためていって、ポジティブに親も子も自己肯定感が高められるような副読本になっていけば良いなってすごく思います」

母子手帳「リトルベビーハンドブック」の導入を

 村上さんたちは2021年11月、「リトルベビーハンドブック」の製作を宮城県に要望しました。
 宮城県子ども・家庭支援課五十嵐弘美さん「いくつかの県では、そういった手帳を既に作成しておりますので、そのような内容を参考にしながら、実際に配る市町村ですとか、医療機関など専門家の皆さまのご意見などもうかがいながら、今後検討していきたいなとは考えているところでございます」

 名取市に住むサークルの副代表の洞口由香さんです。現在、2歳10カ月になる長女・実来ちゃんは、予定日より4カ月早い23週と1日で生まれました。体重は257グラム、身長は21.5センチ。世界的にもあまり例のない小ささでした。
 インフィニティ副代表洞口由香さん「皮膚も出来上がってないような状態で、触ることも指でちょんと突くくらいしかできなかったので」
 生後3日で血管の手術を受けたほか、合併症などもあり、病院を退院できたのは生後9カ月のころでした。この間、洞口さんの支えとなったのは母子手帳ではなく、看護師さん手作りのこの手帳でした。
 母子手帳には書けない我が子の成長を手作りの手帳に細かく記入した経験からも、洞口さんはリトルベビーハンドブックの導入を強く望んでいます。
 インフィニティ副代表洞口由香さん「子どもをケアする物って結構あるんですけど、ママをケアする物や人は少ないので。見ただけで不安が取れて、子どもの成長を素直に喜べるような内容になっていることが大事だと思うので」

 小さく生まれた命。懸命に生きる赤ちゃんとそれを懸命に支えるお母さん。寄り添い、孤立させないために。
 インフィニティ代表村上理美さん「リトルベビーハンドブックの存在があることで、自分は一人じゃないよって、当事者の言葉を聞いて少しでも楽になってくれるお母さんたちが増えてほしいので、なるべく早くできたら良いなって思います」