高齢ドライバーによる事故を防ぐ方法としては、運転できる車を自動ブレーキなどの安全機能を備えるサポートカーに限定した免許証の制度が導入されています。しかし、導入から1年以上が過ぎたものの、宮城県で限定免許を取得した人は1人もおらず、制度が普及していない実態が明らかになりました。

 サポートカー限定免許は、運転できる車を安全運転支援装置の付いたサポートカーのみに限定していて、相次ぐ高齢ドライバーの事故を防ごうと2022年5月から導入されました。

 宮城県警によりますと、運用から1年以上が経つ5月末時点で、宮城県でこの免許を取得した人は1人もいなかったということです。全国でもわずか19人にとどまっています。

 県警の運転免許課には「自分の車は対象車種に含まれるか」「限定免許にすれば優遇措置があるのか」などという問い合わせはありましたが、取得にはつながりませんでした。 県警は自主返納の前の段階として、限定免許の取得を選択肢の1つに入れてほしいとしています。

 県警高齢運転者等支援室高橋充室長「免許の自主返納だけではなく、運転を継続していくに当たりより安全な自動車に限って運転を継続できるという選択肢になっているので、今後運転を不安に感じる高齢者の方はこういう制度も考えてほしい」

 取得が進まない要因について、心理学による事故の防止策などを研究する東北工業大学の太田博雄名誉教授は「高齢者のニーズに合わない制度」と指摘しています。

 東北工業大学の太田博雄名誉教授「新しい車を買うとかなり経済的な負担になるので、高齢者はそんなにお金に余裕があるわけではないので」

 免許を自主返納した場合には、移動手段が電車やバスなど公共交通に頼ることになりますが、多くの自治体で運賃を割引する制度が導入されています。

 一方、限定免許ではサポート装置が供えられた車を購入する必要があり、購入費用を補助している自治体もほとんどないため、経済的な負担が大きくなっています。

 更に対象の車以外に乗ると、違反になってしまいます。

 東北工業大学の太田博雄名誉教授「自分はまだ大丈夫だと思っているのに、なぜそんなことを上から目線で言ってくるのかという心理的な反発も大きいと思います」