東北電力が手掛ける新しい農業についてです。企業や農家とタッグを組み、野菜の生産から販売まで持続可能=サステナブルな農業を目指します。
仙台港の物流拠点の一角にある新しい工場。東北電力が今年2月に設置した、LEAFRUFARM仙台港です。ここで6日からある野菜の出荷が始まりました。
中に入ってみると、鮮やかな緑の葉物野菜が本棚のようなラックで栽培されています。
太陽光発電によるLEDライトでレタスを栽培
衛生管理を徹底された部屋にカメラを持って入ってもらいました。太陽の代わりにLEDライトから降り注ぐ光で育てられているレタスの一種、グリーンリーフです。
この工場の電力の一部は、隣接する物流センターの屋上に置かれた太陽光発電で作られています。
工場には、別の送電線からも再生可能エネルギー由来の電力が送られていて、電力が余った場合、太陽光の電力は外にある蓄電池にため、夜間や曇りの日に利用します。
東北電力法人営業部横山達也さん「環境に優しい電気を使った新たな事業ということで、今回新たに植物工場とそちらの太陽光のパネルを組み合わせて、カーボンフリーの電気を使った野菜の栽培ということで、新しい事業の一環ということで立ち上げた」
東北電力が、企業や農家とタッグを組み目指しているのが、野菜の生産から販売まで、持続可能=サステナブルな農業です。
工場を運営するのは、植物工場の設計や運営を手掛ける東京のベンチャー企業、プランツラボラトリー。
プランツラボラトリー事業推進部島崎正悟部長「衛生的な室内で農薬を使わずに育てていますので、洗わず手軽に食べられる。菌数が少ないので、日持ちするという特徴があります」
植物工場で作る野菜は露地栽培に比べ含まれる菌が少ないため、腐りにくく日持ちする利点があります。また、この工場にはこんな特徴も。
プランツラボラトリー事業推進部島崎正悟部長「これまでの植物工場ですと、郊外にものすごく大きな物を造って、1日何トンというレタスなど葉物を出荷するといった事業モデルが多かった。そうなると、大企業や資本力があるところしか参入できない」
従来の植物工場の床面積は、全国平均で1500平方メートル前後あるのに対し、この工場は300平方メートル。1日の最大出荷量は1000パックです。
コンパクトな工場にすることで、規模の大きくない農家や企業などが農業の転換や参入を考える際、イメージしやすくする狙いがあります。
プランツラボラトリー事業推進部島崎正悟部長「建屋も栽培装置も世に出回っている部材を使って、安くシンプルに造っています。それによって、小規模でも採算が取れる植物工場になっています。誰でも簡単に造れるようシステムを簡素化して、安く造れるような仕組みを必要な所で必要なだけ造る分散型、小型の植物工場として導入した」
野菜の生産を始めとする農業の現状を巡っては、農家の高齢化による担い手不足に加え、自然災害の激甚化で被害の規模が年々深刻になっています。
更に、気候変動による生産量や品質のばらつきなど地球規模の課題が顕在化しています。
未来型でこれからを担う可能性が高い屋内農場
プロジェクトに現場の農家として参加する名取市の農家、西野拓さんです。野菜栽培のノウハウをアドバイスしています。
西野拓さん「屋内農場は、自然災害や異常気象をほとんど受ける可能性が低いといった意味では、今、近年頻発している異常気象を受けないという未来型の、これからを担う可能性が高いシステム」
このシステムは農家の働き方改革にもつながるのではと期待を寄せています。
西野拓さん「もし農家がこれを持つことができれば、ものすごい革命じゃないですけれども、安定した雇用をもたらすことができますし、1年中安定して作物を生産できるということは安定した収益が獲得できる」
現在栽培するレタスの場合、種をまいてから5週間後に収穫するよう計画栽培が可能です。天候に左右されない安定した生産は、価格の安定にもつながります。
収穫されたレタスは、すぐ隣にあるヨークベニマルの物流センターから仙台市近郊のヨークベニマルの店舗へ。
食材の輸送距離はフードマイレージと呼ばれ、これが極力小さくなる地元産の食材を扱うことは環境負荷の軽減につながります。
ヨークベニマル若林店本田旭さん「SDGsが目的というのが一つありましたので、お客様も新聞や報道を見て関心を持ってお買い上げになる方が結構いましたね。味に関しましてもえぐみが少なくて使いやすいという評判は、お客さまの方からいただいております」
レタスのパッケージには「地球にもカラダにもやさしい野菜」の文字。値段は1袋138円です。1年を通じて値段は変わりません。
買い物客「初めて買います。良かったら買い続けようかなって思ってます。試しに買ってみて、安定した金額の方が買いやすいと思っていて今後も」
野菜の生産から販売まで。東北電力が手掛ける持続可能=サステナブルな農業。
大きな期待が寄せられています。
東北電力法人営業部横山達也さん「太陽光パネルと蓄電池を組み入れた設備といったものも含めて、今回この設備は当社の実験としてもいろんな用途で考えて設備を導入しておりますので、ここで得られた知見というのは、東北と新潟合わせた地域に何かしらの還元ができるのかと思う」