宮城県で考えられる最大級の津波の想定が公表されてから、まもなく1年が経ちます。この想定で浸水する面積は東日本大震災の約1.2倍に上り、震災後に整備された住宅地や避難所の他、市役所や町役場も浸水域に含まれました。このため沿岸の自治体では、ハザードマップや避難計画の見直しが必要になっています。
各自治体の進捗状況は、沿岸15の自治体のうち2022年度中にハザードマップを改訂したのは、仙台市、名取市、多賀城市、岩沼市、東松島市、山元町、七ヶ浜町の7市町です。このほかの自治体は、2023年度中の改訂を目指しています。
東北大学災害科学国際研究所佐藤翔輔准教授
「どの自治体でもこれまで避難場所だった所が新たな想定で使えなくなった場所があります。
例えば、名取市の閖上公民館は大津波警報の時に高さが足りない恐れがあるため、大津波警報に限っては屋上のみを使用することにしました。
閖上公民館については付近に適した施設が無く、車が無いなどの理由で遠くまで避難できない人もいるため避難所として残しました。
こういった施設は、どういった条件で使えるのかきちんと住民に伝えることが非常に重要です」
津波の新想定を受け新たな避難所の確保は、多くの自治体で課題となっています。岩沼市では、民間の施設を避難所として利用する動きがみられます。
鈴木奏斗アナウンサー「今回新しく津波の緊急一時避難場所となった企業の建物です。階段を上って2階のフロアが住民の方々が避難できるスペースとなっています」
避難施設として使用するのは、物流会社日本梱包運輸倉庫の岩沼営業所です。
この施設は、海から3キロほどの場所にあり、施設の周辺は新たな想定で約4.3メートル浸水するとされています。
避難先は事務所の2階で、地上から5.7メートルの高さがあり、大津波警報発表時に開放されます。
広さは約200平方メートルで、最大100人を収容することができます。
佐藤淳一岩沼市長「東部地区(沿岸地区)に避難所がやや少ないということがあり、企業と締結したいと考えていた。住民の安心安全を守る上で大切だと思うので、今後も進めていきたいと思っています」
企業と協力して避難所を増やす取り組みは今後、他の自治体でも広がっていきますか。 東北大学災害科学国際研究所佐藤翔輔准教授「これまで避難所といえば行政が管理する施設から選定していたが、災害からの避難で選択肢を増やすことは非常に重要。ただ、避難する人は住民や周辺で働く人のほか、たまたま居合わせた人も対象になる。東北大学ではアドバルーンを打ち上げて避難所を知らせる実証実験にも取り組んでいます。たまたま居合わせた人が避難所がどこなのかすぐに分かる工夫が必要です」
2023年度中には、沿岸部の全ての自治体がハザードマップを改訂します。私たちも新たな情報を積極的に収集する意識が必要だと感じます。