宮城県の海の異変についてです。海水温の上昇などにより、取れるようになった魚と取れなくなった魚と明暗が分かれています。更に、これまで見られなかった厄介な生き物による養殖ワカメへの被害も確認されています。

 石巻市の網地島沖約2キロで漁師たちが取り掛かっていたのは、海に仕掛けた大きな網で魚を取る定置網漁です。アジやサバが次々に水揚げされる中、海面に見えてきたのは暖かい海に生息するウミガメです。数年前から紛れ込むようになり、網に入るたびに海に逃がしています。この日は3頭も入りました。

 更に、海中カメラで網の中をのぞいてみるときらりと光る細長い魚、タチウオが入っていました。暖かい海に生息し近年、三陸沖で増加しています。
 船長「マンボウも入りますし。何でも入ります最近は。水温が高いからじゃないですか」

 今、ある生き物の明暗が大きく分かれています。水揚げされていたのは、アカイカとも呼ばれるケンサキイカで体長は大きいもので30センチほどです。
 長崎県や山口県など西日本近海に多く生息していますが、ここ数年で急増しました。宮城県でのケンサキイカの水揚量は、2016年までは70トン以下で推移していましたが2017年以降急増し、2023年は317トンに上りました。

南の海のケンサキイカが取れる

 ケンサキイカとは対照的に深刻な不漁に陥っているのが。
 船長「スルメイカが全然入らないですよ、20年前ぐらいに比べたら。箱詰めとか結構してたんで。本当に見ないですね。全然」
 冷たい海水を好み、北海道沖から三陸沖で多く水揚げされてきたスルメイカの宮城県での水揚げ量は、2000年台には1万トンから2万トンで推移していましたが、近年は1000トン台の低水準で推移しています。2022年は940トンと初めて1000トンを割り込み、過去最低となりました。

 こちらの漁船では、以前は一度の漁で2トンから3トンほどの水揚げがありましたが、この日は、わずか数キロ。大きさも30センチほどが主力でしたが、今は15センチほどの小さいものだけに。市場関係者は、かつてない不漁に頭を悩ませています。
 仲買人「きついことはきついでしょ。スルメイカを取っている人たちにとっては、ものすごいダメージだし。イカ全体が少ないから、ケンサキイカの需要も増えて来ているし、市場に揚がれば我々も出荷してやって、消費につなげなくちゃいけないし」

 新たに取れるようになったイカと姿を消しつつあるイカ。要因の1つが海水温の上昇です。三陸沖の平均海水温は、過去40年間で1.96℃上がっていて、暖かい海にすむ生き物には生息しやすく冷たい海を好む生き物にはすみにくくなっています。

 近年、暖かい海流の黒潮が北上していて南寄りの海の生き物が三陸沖まで来やすくなっていることも理由の1つです。海の生態が大きく変化するなかで、更に厄介な生き物が宮城県の海に次々にやって来ています。

養殖ワカメに被害

 2023年12月に南三陸町の志津川湾で撮影された映像です。養殖いかだにメジナが群がりワカメを食べています。メジナは主に房総半島以南に生息し、海藻を食べる雑食の魚です。
 2023年11月、漁業者から養殖ワカメが被害を受けたと報告があり、南三陸町自然環境活用センターが調べたところ、メジナによる被害だと分かりました。メジナによる食害が確認されたのは初めてです。

 志津川湾ではこれまでも数センチの幼魚は確認されていましたが、10センチを超えるメジナはほとんどいなかったと言います。
 南三陸町自然環境活用センター阿部拓三研究員「夏場の水温が非常に高かったことと秋口になってもほとんど水温が下がらなかったことでメジナの成長も増して、あるいは越冬したメジナが大型化してワカメを積極的に食べるようなサイズになって被害が顕著になってきたのかもしれないと考えています」

 養殖ワカメに被害を与えていたのは、メジナだけではありません。志津川湾で見つかったアマクサアメフラシです。体長は約20センチでメジナと同様に暖かい海にすみ海藻を食べる生き物で、西日本ではワカメやコンブなどに被害が出ています。
 南三陸町自然環境活用センター阿部拓三研究員「このまま水温の高止まりが持続すれば当然海藻を食べる魚も増えて、サイズも大型化していきますので被害の拡大というのは注意していく必要があると思います」